帰った日の夕方、千佳さんへ電話した。病院へ行く電車を待っていると言った。
「拓海の仕事先へ、月曜、連絡すること、頼まれました」
『そう。さっき警察の方からも電話あった。祐助君たちは帰れた?』
「はい。拓海から、お母さんに頼まれたんじゃなくて、自分で会ったって伝えてくれって。でもそれだけ、先に言うのは嫌で」
財布から出した名刺に、事務所の番号があった。
「首を締めたのは、自分だって。俺にも話しました」
電車の案内が聞こえた。
『聞いたよ。何をしたかも。……自分で電話してくればいいのに』
「はい」
『ごめん。祐助君に言っても。どうして来たのかは、私が訊くから』
椎茸を女将さんが送ってくれると話した。千佳さんは、職場の人の分も二袋と言ったでしょう、と返した。
「自分の分も買ってました」
『そういうのは勝手に買うのね。送り先は梢さんが知ってるから、私から掛ける。あなたたち、ちゃんと食べた?』
「朝、食べました」
『なら、よかった』
電車が来たというので切った。電話の前に開いていた大会の案内が、そのまま残っていた。
来月、市民会館でクイズの大会がある。出場者の名前を入れる欄まで来て、家に帰ったら千佳さんへ掛けようと思っていたことを思い出したのだった。
青凪祐助、と入れて申し込んだ。名前を書いたことだけは、誰かに言いたくなった。
月曜は八時四十分に起きた。一限にはもう間に合わなかった。二限へ行くシャツを着て、九時に事務所へ掛けた。
受付から水野さんへ替わった。
『青凪さんですね。池上から聞いています』
「本人からですか」
『昨夜、連絡がありました。先生にも話しています』
「十時の方の、続きの話なんですけど」
『お母様が亡くなった方ですね。記録を見ています』
「机の紙だけじゃなくて、事務所にもあるって。拓海が、今度は先にいるって言ったから、その人に」
向こうで誰かを呼ぶ声がした。十時の方が来たら自分へ、と水野さんが伝えた。
『今日は私が待ちます。池上がどこまで聞いたか、いま確認しているので。続きから伺えます』
十時に来る人の顔を僕は知らなかった。拓海がその人を待つところも見たことがなかった。
「お願いします」
『伝えてくださって、ありがとうございます』
九時八分だった。事務所の番号は連絡先に残った。
靴を履いていると、亮から三限から来ると届いた。宏和は祖母の家へ行くので休む。物置の壁を見てから、自分が業者へ掛けることになったという。
僕は二人へ大会の案内を送った。出る、と一語を付けた。
〈今度は賞金?〉
亮から来た。
〈ない。賞品〉
〈肉か〉
僕は案内をもう一度読んだ。決勝へ残った人に何が出るかは書いてなかった。
〈知らない〉
〈分かってから教えて〉
宏和からは、終わる時間は? と来た。
午後の予選で負ければ帰れる。勝てば夜までかかる。そう送ると、勝てばいいだろ、と返ってきた。
大学へ着くと、隣の友人が土曜のお礼を言った。課題の画像が読めたので提出に間に合った。
「旅行の方も、もう一回送って。四人の」
僕は土曜のやり取りを開いた。白い壁の写真で、拓海が亮の腕を引いていた。
「建物のやつ、ある?」
「宏和が。俺はまだもらってない」
「じゃ、その四人のでいいよ」
二枚とも残っていた。開けば大きくなる。
「途中で帰った」
「天気?」
教室の前でマイクの音がした。友人は、後でいい、と前を向いた。
配られた紙の上に日付を書いた。一限の欄は空いていた。