箱の外で待ち合わせ

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CHAPTER 19 / 19

終章 二回目

会場の机は一つ減った。

 小鈴が前へ客席を寄せ、あとから自分が座る椅子を忘れたと騒いだ。僕が予備を出すと、それ、後ろのお客の、と返された。

 凪は会場へ来なかった。ルカも名古屋の下見でいなかった。都は、台の最初の組立は別の人になった、と言った。

「もう、こっちの家賃も自分で払う。納品、二つ減るんだよね。車ある人だけ、探してる」

「僕の会社へ、見積り出そうか」

「出して。運ぶ日、まだ変わるかもしれないけど」

 都は携帯をしまった。ルカと何を決めたかは、僕へ全部話さなかった。

 都は鞄を椅子の下へ置いた。型紙はもう入っていなかった。小さい缶を出し、蓋を開けた。包まれた飴が、何粒か残っていた。

「持ってって」と言われ、僕は一つ取った。彼女は自分の分も取り、蓋を閉めた。

 サエさんが来た。ソファのカバーはまだ縫い終わっていない。金の布は、派手すぎるから、内側へ入れるという。

「見えなくなるね」

「座ったら、少し出る。あんた、外から見るだけだから」

 彼女は僕の飴へ手を出し、一つもらうと都へ言った。

 サエさんが持主、小鈴が冷蔵庫を読む。僕は、物を取りに来た客が一回帰り、忘れ物で戻る所へ出る。凪の続きではなく、小鈴が三分の中へ直した紙だった。
 サエさんは紙を持って歩いていた。僕が役を確認しようとすると、いま字、探してる、と指を上げた。眼鏡を掛けると、主人の最初の行が見つかった。僕は自分の一枚目を出した。
 源さんの写しは、今日は使わない。小鈴が直した原稿には、僕の客が二回戻る方と、一回で帰る方があった。戻る方を客席が選んだ時には、サエさんへ合図してと言われた。持主が扉を閉める所で、サエさんは机を持たないと決めた。紙を持つ方の手が空かないためだった。
 小鈴は三分と言っていたけれど、僕が二回戻れば、何分になるかはまだわからなかった。

 会場の人が、そろそろ、と扉を開けた。

 小鈴が先に出て、客席へ、一度帰った客を戻していいか訊いた。
 後ろの人が、戻らなかったら何するの、と訊き返した。
「客が戻らなかったら、持主と冷蔵庫で片づけます。私、そっちはまだ知らないところもあるので」
 サエさんが紙を持ち上げた。片づける方の一枚が見えた。
「じゃ、戻して。あとで片づける方も聞きたい」
「今日は一つ。次、また来て」
 小鈴が返すと、別の人が、それ商売だ、と笑った。僕は二回目の頁へ指を入れ、抜いた。一回目からだった。
 サエさんが紙を揃え、僕を見る。僕は紙を高く上げすぎていた。

「そこ、顔、見えない」と言われ、少し下げた。

 客席に、源さんの姪がいた。空けておいた席ではない。最後にもう一人、友達を連れて来ると連絡があり、小鈴が椅子を足した。

 僕の最初の台詞は短かった。急いで一度に言い終え、小鈴がこちらを見るまで、紙の字が目へ入らなくなった。

 サエさんが扉の話をした。小鈴が帰りかけ、途中で僕を向いた。僕は紙をめくった。

 二回目に来る客の最初を、見つけられなかった。

 サエさんが咳をした。台詞の咳なのか、待ってくれたのか、僕にはわからなかった。小鈴が僕の名前ではなく、客の用事を聞いた。

 客席の一人が少し笑った。僕は鞄へ手を出しかけた。今日は持っていない。紙の方へ戻すと、小鈴はまだ、何を取りに来たのか待っていた。

 僕は顔を上げた。

「忘れた方を、訊きに来ました」

 サエさんが、私も忘れた、と返した。客席が笑った。小鈴は二人を見て、扉をもう少し開けた。

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目次

箱の外で待ち合わせ

  1. 01運んだ箱
  2. 02三分の役
  3. 03窓の裏
  4. 04帰ってから
  5. 05下ろした分
  6. 06受取人の署名
  7. 07靴の袋
  8. 08焦げた角
  9. 09聞いていた人
  10. 10店の前
  11. 11持ったまま
  12. 12二つの水
  13. 13切る方
  14. 14見られる客
  15. 15聞こえる方
  16. 16土曜の九時
  17. 17返す紙
  18. 18台を下ろす
  19. 19終章 二回目読書中

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