箱の外で待ち合わせ

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CHAPTER 10 / 19

第十章 店の前

ルカはひばりの住所を読み上げた。

 小宮さんが、大家の番号も、と言った。ルカは携帯で探し、写真と一緒に送った。僕の東の写真も送った。榊さんは最初に届いた画像を、保存し直す前にどう渡せばいいか確かめた。

「俺、行きたいです」とルカが言った。「いなかったら、そこに、ほかの物があるか。それも聞きたい」

 小宮さんは現地へ連絡すると答えた。中へ勝手に入らず、着いたら待っている警察官へ名前を言うよう頼まれた。

 畑野さんが机に手をついた。

「僕、案内するよ。鍵も」

「住所、わかった」とルカが言った。

 都の姉は、自分の上着を取った。ルカも同じ上着へ手を伸ばしたので、姉が、私が着る、と袖を抜いた。彼は手を引いた。

 店の扉が開き、警察官が畑野さんの名前を呼んだ。東から戻ったあと、もう一度話を聞く約束だったという。

 畑野さんは僕を見た。

「歩、慌てて行かなくていい。向こう、もう動いてるから」

 僕は鞄を取った。何を持って行けばよいか決められず、とりあえず仕事の手袋を入れたままにした。

「一緒に来る?」

 榊さんに聞かれ、はいと答えた。

「窓、畳んだので」

 それだけ言った。サエさんは膝の靴を寄せ、僕らが椅子の間を通れるようにした。小鈴が凪の携帯を見ていた。凪は、こっちは俺が残って話す、と言った。

 タクシーは二台になった。

 ルカと姉が先に出た。僕は榊さんの隣へ座った。小鈴から、いま何がわかった、と文が来た。まだ場所しか、と答えた。

 凪からも来た。水の瓶は喫茶店で預かってもらった、と先にあった。僕は蓋を開けたか訊きかけて、窓の方を読んだ。

『窓、畳んだやつ、送る。脚の、見えてた』

 僕は、必要なら現地で聞く、と返した。再生する前に榊さんの電話が鳴った。

 大家からだった。警察と合鍵で中を見に行くという。榊さんは手帳を開き、停車した時に、土曜の壁の受取りを聞いた。

「脚も二本、受け取られたんですね。鍵は、まだ。はい」

 彼女は紙へ日付を書いた。声を聞く間、鉛筆は動かなかった。

 電話を切り、僕へ、土曜の五時前に壁を受け取って帰ったと教えてくれた。東へ移す話は聞いていなかった。月末の退去の約束は残っている。

 僕は携帯を握った。僕が運んだ箱と、僕らが積んだ壁。東は火事で、都の写真はひばりだった。

 榊さんが僕の手を見た。

「タクシー代、先に私が出します。あとで分けましょう」

「はい。財布、あります」

 そう答えて、財布を出さなかった。彼女も今は支払わない。僕は携帯を鞄へ入れ、車の揺れが止まるまで窓の外を見た。

 ひばりの赤と青の柱は、回っていなかった。

 看板の下半分へ白い紙が貼ってあり、ガラス戸の内側にも紙がある。細い隙間から灯りが見えた。警察官が戸の前で僕らの名前を聞いた。

 ルカは道路の向こうにいた。姉は上着の襟を寄せ、ガラス戸を見ていた。

「大家さん、入った」と姉が言った。

 戸が開いた。中へ入る人の背中の向こうに、青い窓が見えた。

 窓の先は白かった。僕は、部屋がそこで終わっているように見えた。舞台では、その後ろを歩けた。

 戸が閉まると、青い枠も見えなくなった。

「外向きじゃないね」とルカが言った。

「うん」

「奥の戸、右から、通れるはずなんだけど」

 彼は大家からもらった写真を出した。白い戸が端へ写っている。都の鞄の写真には、その部分が入っていなかった。

 警察官が中から出て来た。

「壁板を組んだ人は」

 僕らは二人で手を上げた。ルカが右手首を押さえ、写真を見せてくれないかと頼んだ。警察官は携帯を出した。

 壁の右の一枚が折れ、白い戸を半分隠していた。棚の箱が、裏の桟の端へ載っている。

「その箱、先に取らないで」とルカが言った。

 警察官はすぐに、店の中へ声をかけた。

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目次

箱の外で待ち合わせ

  1. 01運んだ箱
  2. 02三分の役
  3. 03窓の裏
  4. 04帰ってから
  5. 05下ろした分
  6. 06受取人の署名
  7. 07靴の袋
  8. 08焦げた角
  9. 09聞いていた人
  10. 10店の前読書中
  11. 11持ったまま
  12. 12二つの水
  13. 13切る方
  14. 14見られる客
  15. 15聞こえる方
  16. 16土曜の九時
  17. 17返す紙
  18. 18台を下ろす
  19. 19終章 二回目

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